(○、◎などは私の好み度)
◆読了:桐野 夏生 グロテスク ○
出版社: 文春文庫
ISBN-10: 4167602091
ISBN-13: 978-4167602093
正直、読み終わってドッと疲れを感じました。つまらないとか、面白いとか、そういった小説レベルの感想とは違うところ、何か心理学の本を読み終えたような気持ちになりました。ひとごとではなく、誰しもどこか何かが紙一重の部分がありやしないか・・・。そんな風に思いながら読んで疲れてしまったのでした。
医学部も持つ名門大学付属の女子高に高等部から入学した「わたし」が語る4人の女性。それぞれの学生生活、卒業後の生活、そしてその生を終えるまでの過程を「わたし」の妹「ユリコ」と「わたし」の同級生の和恵の手記を紹介する形で語られます。
「わたし」の同級生ミツル、生物教師とユリコの同級生である木島親子、どこかユーモラスな祖父、和恵の両親やわたしの両親、ユリコを学校に行かせたジョンソン夫妻。誰一人として平凡ではありません。
上巻は類まれな美人である「ユリコ」についての描写や「わたし」の学生生活が詳しく描かれます。学園では下から通っている人が優位で余裕があり、それに必死についていこうとする和恵やユリコの姉が妹を嫌う理由などが主に語られます。
下巻は被告人となるチャンが登場し、和恵の手記によって彼女が壊れていく過程、ミツルとの再会が中心に描かれますが、これがグロテスクで悪意に満ちていて寂しくて悲しいのです。和恵のお客さんの人物像もすごい。
複雑な心境だけど、読んでみてよかったと思う個性的な小説でした。。。